0から始める基礎Agentアシスタント構築
本チュートリアルでは、企業内の知識管理シナリオに適した、知識ベースに基づくインテリジェントQ&A Agentをゼロから構築する方法を紹介します。このアシスタントは企業の知識ベースから情報を検索し、ユーザーの質問に対してインテリジェントに応答することで、情報取得の効率を向上させます。
例として、M365運用エンジニアの日常業務を取り上げます。プロジェクト運用中には大量のドキュメントを参照する必要があり、これらのドキュメントは種類が多く散在しているため、手動での検索は時間と労力がかかります。インテリジェントAgentを活用することで、参照効率を大幅に向上させ、重複作業を削減し、運用業務の利便性を高めることができます。
本チュートリアルでは、このシナリオを背景に、実用的な知識Q&Aアシスタントの構築手順を段階的に説明します。
Agentに必要な知識ベースの準備
Agentを正式に作成する前に、依存する知識ベースを準備・設定する必要があります。Agentのコア能力は知識ベースの内容に依存するため、高品質で構造が明確な知識ドキュメントが非常に重要です。
本ケースでは、既存の知識ベース**「Microsoft Learning Database」**を情報源として使用します。
- この知識ベースには、M365運用関連のドキュメント、FAQ、操作マニュアルなどが事前にアップロードされていることを確認してください。
- 対応ファイル形式は一般的にPDF、Word、TXT、ウェブコピーなどで、アップロード前に以下の処理を推奨します:
- 内容を分類整理し、システムの検索を容易にする。
- ファイル命名規則を統一し、曖昧さを避ける。
- 冗長な情報を除去し、テキストの可読性を向上させる。
✅ ヒント:知識ベースの内容の充実度、ドキュメントの品質、構造の明確さは、Agentの回答の正確性と有用性に直接影響します。運用チームは定期的に知識ベースの内容を更新・メンテナンスすることを推奨します。
知識ベースの準備が整ったら、Agent設定段階で「知識ソース」機能を通じて該当知識ベースを接続し、内容に基づくインテリジェントQ&Aを実現します。

「M365 Support」基礎Agentの作成
- SERVICEME NEXTのホームページにアクセスし、左側ナビゲーションバーのAI StudioをクリックしてAgent画面に入ります。
- Agent画面の左上にある**「アシスタント作成」をクリックし、「基礎オーケストレーション作成」**方式を選択します。
- 以下の基礎情報を入力します:
- アシスタント名:
M365 Supportと入力 - エージェントアイコン:システム内蔵のアイコンから選択(現在はカスタムアップロード非対応)
- モデルグループ:管理者が設定したモデルグループを選択(例:
普通モデルグループ) - カテゴリ:業務所属カテゴリを選択(例:
IT類) - 説明:例として
M365運用エンジニア向けの知識ベースQ&Aサポート
- アシスタント名:
- 入力完了後、**「作成」**をクリックすると基礎Agentが生成されます。



「M365 Support」基礎Agentの設定
作成完了後、システムは自動的にAgentの設定ページに遷移します。以下の設定項目を順に完了させます。
1. プロンプト設定
- プロンプト入力欄に簡潔なヒント情報を記入します。
- **「インテリジェント生成」**をクリックすると、モデルが自動的にプロンプトを拡張し、より完全なバージョンを生成します。
- 本例のプロンプトは以下の通りです:
## Role
You are an M365 Operations Support Assistant, specializing in helping operations engineers analyze issues related to Microsoft 365 services and efficiently retrieving relevant resources from the knowledge base.
## Skills
1. Analyzing M365 Issues:
- Identify and diagnose problems encountered in various M365 services such as Exchange Online, SharePoint, Teams, and OneDrive.
- Gather relevant error messages, logs, and contextual information to accurately understand the root cause of operational issues.
- Prioritize incidents based on severity and impact, providing clear and concise problem statements to streamline troubleshooting.
2. Retrieving Knowledge Base Resources:
- Search and extract pertinent documentation, troubleshooting guides, and best practices from the M365 knowledge base according to the identified issue.
- Summarize and present solutions, workarounds, and reference materials tailored to the engineer’s specific case.
- Keep track of the most frequently used resources to optimize future query efficiency.
## Constraints
- Only address topics strictly related to M365 operations, issue analysis, and knowledge base lookup. Decline unrelated queries.
- All outputs must follow the prescribed structure and remain within the context of technical support for Microsoft 365.
- Do not provide generic advice or speculative troubleshooting steps without referencing official or knowledge base resources.
2. 挨拶文設定
- カスタム挨拶文を入力するか、**「インテリジェント生成」**をクリックして自動生成も可能です。
- 本例の挨拶文は以下の通りです:
Hello, I am M365 Support, here to assist you with Microsoft 365-related questions and support needs.
[How can you help me troubleshoot issues with Microsoft 365?] [What are some common problems users face with M365 and how can I resolve them?] [Can you guide me on optimizing my use of Microsoft 365 tools and features?]
3. モデルグループ設定
-
Agent作成時に選択したモデルグループ(例:
普通モデルグループ)が自動的に反映されます。 -
必要に応じて切り替え可能ですが、以下に注意してください:
- 環境によってモデルグループの内容が異なる場合があります。
- モデルグループの内容は管理者が事前に設定しています。
- 本例で使用している
普通モデルグループには、gpt-4.1、DeepseekR1-Ai/DeepSeek、gpt-4.1-miniが含まれています。

4. スキル設定(任意)
- スキルは管理者がスキル管理で事前に作成したもののみ利用可能です。
- 一般的なスキルには、ウェブ閲覧、ニュース検索などがあります。
- 本例ではスキルは設定しません。必要な場合のみ追加を推奨し、多すぎるスキルはAgentの性能に影響を与える可能性があります。
5. MCP設定(任意)
MCPはAIモデルと外部ツール、データ、APIをつなぐ「橋渡し」です。
- MCPは個人作成のプラグインや組織内蔵・作成のMCPがあります。
- ユーザーは実際のニーズに応じて、該当する機能プラグインを選択・有効化できます。
- 一般的なMCPにはcalculator、tavily、arxivなどがあります。
- 本例ではMCPは設定しません。必要な場合のみプラグインを追加してください。MCPツールを多用すると、プロンプト長がモデルのコンテキスト制限を超え、使用感に影響を及ぼす可能性があります。
5. 対話体験設定
対話体験はAgentとユーザーのインタラクションの細部を決定します。業務シナリオに応じて適切に設定することを推奨します。
- コンテキストメモリ数:
5件に設定します。これはAgentが直近5ターンの対話内容を保持し、文脈理解に利用することを意味します。- 利点:多ターン対話の一貫性を高め、複雑な質問の処理に役立ちます。
- 注意:コンテキストが多すぎると応答が遅くなったり情報が混在したりするため、5件が一般的な推奨値です。

-
歯車アイコンをクリックして詳細設定に入り、主な設定項目は以下の通りです:
-
ユーザー推奨質問を有効化
- 機能:現在の対話コンテキストに基づき、ユーザーに続けて質問可能な内容を自動提案します。
- 適用シーン:ユーザーの質問誘導を強化し、初心者に優しい業務シナリオに適しています。
- 本ケースの推奨:無効化可。運用エンジニアは通常明確な目的を持っているためです。
-
質問ガイドを有効化 ✅
- 機能:入力欄に参考質問例を表示し、ユーザーの質問ハードルを下げます。
- 本ケースの推奨:有効化。ユーザーが質問可能な内容の範囲を理解しやすくなります。
-
チャット履歴を有効化 ✅
- 機能:ユーザーとAgentの過去対話履歴を保存し、後から参照可能にします。
- 適用シーン:問題追跡、ケース再現、知識ベースのチューニングに有効です。
- 本ケースの推奨:有効化。運用担当者が問題を振り返りやすくなります。
-
チャットフィードバックを有効化 ✅
- 機能:ユーザーが各回答に対して「いいね」や「よくないね」、コメントを残せるようにし、フィードバックを収集します。
- 適用シーン:回答品質の監視と継続的な改善に役立ちます。
- 本ケースの推奨:有効化。ユーザーの意見を収集し、Agentの回答品質向上に活用します。
-
キーワードフィルタリングを有効化
- 機能:センシティブワードを含む入力・出力をブロックし、コンテンツのコンプライアンスを確保します。
- 本ケースの推奨:企業内のコンプライアンス要件に応じて適宜有効化してください。
-

6. 知識ソース設定
知識ソースはAgentの回答の核となる情報源を決定します。正しい知識ベースと検索戦略を設定することで、Q&Aの正確性を大幅に向上させることが可能です。
- 知識ベースの選択
- 右側の**「+」**をクリックし、表示されるリストから業務に必要な知識ベースを選択します。例:
Microsoft Learning Database(M365運用関連ドキュメント集)。
- 右側の**「+」**をクリックし、表示されるリストから業務に必要な知識ベースを選択します。例:

-
知識ソースの設定(歯車アイコン)
知識ベース設定画面に入り、詳細パラメータを設定します:-
検索戦略:
ハイブリッド検索- ハイブリッド検索は意味理解とキーワードマッチングを組み合わせ、リコール率と正確性を向上させます。
- 本ケースでは有効化を推奨し、ドキュメント量が多く多様な質問がある知識Q&Aシナリオに適しています。
-
最大リコール数:
5- システムは知識ベースから最大5件の関連コンテンツを呼び出し、回答生成に利用します。
- 推奨値は5件で、多すぎると応答速度が遅くなり、少なすぎると重要情報を取りこぼす可能性があります。
-
プライベートドメインQ&A強制:
有効✅- 有効化すると、Agentは選択した知識ベースの内容のみを用いて回答を生成し、一般的なモデル知識は参照しません。
- メリット:回答内容の信頼性、正確性、制御性を確保します。
- 本ケースの推奨:有効化。M365に無関係な一般化された内容の生成を防ぎます。
-
ドキュメントマッチング類似度、QnAマッチング類似度:
デフォルトのまま- デフォルト設定は多くのシナリオに適合しています。実際の利用でリコール失敗や誤判定が発生した場合は、適宜調整してください(一般的には0.6~0.8の範囲)。
-

⚠️ 本シナリオでは外部データソースの設定は不要です。リアルタイムAPIやデータベース接続が不要な場合は、「データソース」設定はスキップしてください。
7. 保存とテスト
- 設定完了後、右上に「アシスタントが編集されました。同期をクリックしてください」と表示されます。
- **「同期」**をクリックすると、右側でQ&Aテストが可能になります。例えば以下の質問を入力します:
- 「Copilotを作成するにはどうすればよいですか?」
- 「Copilotの設定方法は?」
- テスト結果に基づき設定を微調整し、回答が期待通りになるまで調整します。
- 最後に右上の**「公開」**をクリックし、Agentの設定を完了します。

完全な設定例は以下の通りです:

「M365 Support」Agentアシスタントの使い方
-
設定完了後、ユーザーはインテリジェントアシスタントとの対話を開始できます。
-
チャットボックスに、知りたい質問を直接入力してください。
- 例:「最近のM365で注目すべき新機能は何ですか?」
-
アシスタントは事前に設定された知識ベースをリアルタイムで検索・推論します。
-
検索した情報に基づき、正確で信頼性の高い回答を生成します。
